変形性股関節症にアイシングは効果あり?

変形性股関節症になり、関節軟骨のすり減りや変形が進むと、関節軟骨の周りにある滑膜や関節包、骨膜といった関節周囲の組織の炎症が起こります。

関節軟骨のすり減りが大きくなると、少しの荷重の刺激でも炎症を起こしやすくなり、痛みが生じるようになります。

整形外科などでは急激に起こった炎症に対しては、痛みを緩和するためにアイシングや消炎鎮痛剤の使用で炎症の鎮静、痛みの緩和を図ることがあります。

また、変形性股関節症が進行し、人工股関節置換術の手術を行った後の腫れや痛みに対してもアイシングが行われることがあります。

アイシングとは?

アイシングとは、氷と水を入れた氷嚢などで炎症が起きている部分を冷やすことです。

アイシングを行うことで、

・血管を収縮させ、血流を少なくすることで炎症が起きている部分の内出血を抑え、腫れを最小限にとどめる。

・体温を低下させて細胞の働きを制限し、炎症による組織の破壊が広がることを防ぐ。

・冷やすことで感覚を鈍くして痛みを感じにくくする。

・筋線維の活動を低下させ、炎症によって起こる筋肉のけいれんを起こりにくくする。

という効果があります。

アイシングは、1回15~20分程度、冷却による凍傷に留意して行います。

整形外科や整骨院などではアイシングをおこなうことが多いです。

変形性股関節所の時に行われるアイシング

整形外科などでは変形性股関節症により、急性の股関節の炎症が起きている時に、腫れや痛みを緩和する目的でアイシングが行われることがあります。

手術を行わない保存療法では、アイシングよりも外出時や夜間など、どのような場面でも利用でき、自宅で継続して使用しやすい冷湿布を用いる場合が多いです。

変形性股関節症の手術療法である人工股関節置換術は、すり減った股関節を取り出し、人工の股関節に入れ替える手術です。手術後は、筋力低下や関節の拘縮を防ぎ、術後の経過を良好にするために早期にリハビリが開始されます。しかし、手術をした股関節周囲は炎症が起きているため、腫れや強い痛みを伴います。手術後の腫れや痛みを緩和するためにアイシングを行い、炎症を最小限に抑えながら術後のリハビリが効率よく進むようにしていきます。

変形性股関節症の方はアイシングを行わない方が良い

変形性股関節症の場合、痛み緩和のためにアイシングをおこなうことがあります。しかし、変形性股関節症自体が関節への血流不足で関節軟骨の劣化、摩耗を促進するので、痛みが和らぐからと言って血流が悪くなるアイシングをするのはその場で痛みが緩和しても結果的に変形性股関節症の症状を進行させてしまうことになります。

変形性股関節症の方が何かの際に急激に痛みを引き起こしたとします。この時も痛みは強くてもアイシングを行わない方がよいでしょう。

アイシングは「炎症を抑える」という目的のためにおこなわれることが多いですが、炎症=敵ではないのです。炎症は体を治すために必要な反応なのです。

変形性股関節症の方が、何かの拍子で足を変な形で着き、股関節の痛みが急激に強くなったとします。この時は関節を包む関節包や滑膜に炎症が起き、痛みが強くなります。しかし、関節包や滑膜が炎症を起こすのは傷ついた組織を修復するためです。傷ついた組織を修復するためには血液循環を良くしなくてはいけません。そのために血管を広げてたくさんの血液を股関節周りに集める必要があります。血管を広げるために体内では血管拡張物質であるプロスタグランジンが放出されます。プロスタグランジンが放出されると血管は広がり血液循環が良くなります。しかし、プロスタグランジンが放出されると人間にとって「痛い」と感じるようになります。だから炎症が起きている時は痛いのです。

アイシングをすることでプロスタグランジンの放出を止めれば炎症反応は小さくなりその場での痛みは緩和します。しかし、組織の修復のために血管を拡張させようと体が反応したのにも関わらず、プロスタグランジンの放出を止めてしまうと血液循環は悪くなり、関節軟骨に栄養が行きわたらなくなり変形性股関節症はさらに悪化してしまいます。

 

今までの西洋医学領域では「炎症=悪」「痛み=消し去るもの」と考えられてきました。その結果できたのがアイシングです。しかし、アイシングは慢性痛を引き起こし体にとって不利益だと訴える医師たちが世界的に増えてきています。

むしろ体は温めた方が自然治癒力が高まります。急性期に温めると痛みが増しますが、一時的に痛くてもそのほうが治癒力が増し、結果治りが早いことが多いです。

当院でも捻挫やギックリ腰など急性期の患者さんは多数いらっしゃいますが、10年以上アイシングをおこなったことはありません。むしろ積極的に温めています。結果、治りはだんぜん早いことを実感しています。

変形性股関節症の方は慢性疾患であるためできるだけ冷やすのではなく温めて、プロスタグランジンの放出を促して血管を拡張させ組織の修復がおこなえる環境にすることが何よりも大事です。