半月板損傷のリハビリ

スポーツ外傷としての受傷頻度が高い半月板損傷、若年者ではサッカーやバスケットボールなどのジャンプ動作の踏切時や着地動作時、サイドカットなどの際に膝を捻る力が加わることで受傷します。また、半月板は加齢に伴い変性しやすくなるため、中高年や高齢者では大きな外傷がなくても損傷しているケースもあります。 

 

この半月板損傷の治療は、その損傷の部位や様式、範囲などといった病態によって保存療法もしくは手術療法が選択されます。保存療法では手術なしに痛みを和らげ、生活を送るためのリハビリテーションが、手術療法においても術後のリハビリテーションが重要となります。今回は、保存療法、手術療法における半月板損傷のリハビリテーションの進め方についてみていきます。 

半月板損傷の保存療法におけるリハビリテーション

半月板は荷重を分散させて、膝関節への負担を軽減させてくれます。この荷重分散機能の重要性が認識されてからは、できるだけ半月板を温存することが大切であるとされています。 

 

保存療法では、装具やテーピングによる補助補強、疼痛軽減・日常生活復帰・スポーツ復帰のためのリハビリテーションを行います。しかし、炎症が強く疼痛のある急性期ではまず、局所の安静が大切です。加えて、関節穿刺による関節液の吸引や局所麻酔薬、消炎効果のあるステロイド剤注入などによって疼痛緩和を行います。また、最近ではヒアルロン酸ナトリウムを関節内に注入する方法もとられることもあります。 

 

急性期における炎症が治まると、リハビリテーションを徐々に進めていきます。半月板損傷が起こると、普段の生活から受傷した側の脚をかばうようになり、受傷側の著明な筋力手が生じます。筋萎縮の進行は非常に速く、半月板損傷を起こした2週間後には15%、1ヶ月後には30〜50%もの筋力低下が生じるとも言われています。そのため、半月板損傷のリハビリテーションは、この筋萎縮の生じた筋肉のトレーニングが主な目的の1つとなります。ただし、保存療法では、損傷した部位へのストレスを極力避けた運動療法が大切となります。 

 

そのため、半月板損傷のリハビリテーションにおける運動療法はまず、等尺性収縮という運動様式から始めることが多いです。これは筋肉が収縮していても筋肉の長さは変わらないという収縮様式であり、関節運動を伴いません。特に、筋萎縮が生じやすい大腿四頭筋をはじめとして、膝関節に関与するハムストリングスや腓腹筋、さらには股関節周囲の屈筋群、伸筋群、内転・外転筋群、内旋・外旋筋群などを強化していきます。そして、等尺性収縮から徐々に関節運動を伴う等張性収縮へと運動療法を進めていきます。 

 

また、半月板損傷を起こす人の多くは膝関節の正しい運動が行えていない場合が多いです。本来であれば膝を曲げていくにつれ下腿が内側に回旋していくのに対し、半月板損傷を起こす人には膝を曲げると反対に下腿が外側に回旋するケースが見受けられます。このように正しい運動を行えていないことが、半月板損傷を起こしやすくし、痛みを引き起こしていることもあります。そういったケースでは、治療者が徒手で運動方向を誘導したりして、正しい筋肉の使い方を覚えさせていきます。特にハムストリングスという筋肉が上手く使えていないケースが多いため、このハムストリングスの正しい使い方を誘導します。 

 

また、膝関節周りの筋肉のトレーニングともう1つ、膝関節の曲げ伸ばしの可動範囲の改善もリハビリテーションの大きな目的となります。半月板損傷では、膝を深く曲げる際に痛みが生じたり、曲げ伸ばしの際に違和感を伴ったりします。この膝の曲げ伸ばしに伴う痛みの生じる部位や程度を評価しながら、半月板の動きをイメージし、痛みの原因を探っていきます。反対に膝が伸びにくい場合には、膝蓋下脂肪体という組織が硬くなっていることがあります。膝蓋下脂肪体は内側と外側の半月板をつなぐ横靭帯の前面にあり、膝蓋下脂肪体が硬くなって動かなくなることで、半月板の動きが阻害されます。その場合は膝蓋下脂肪体のマッサージ、モビライゼーションによって膝を伸ばす動きを促していきます。また、膝が伸びにくい場合には、膝の後面にあるハムストリングスという筋肉が硬くなっていることも多いため、ハムストリングス、特に内側ハムストリングスをほぐす方法も多く用いられます。 

半月板損傷の手術後のリハビリテーション

半月板損傷の部位や損傷の程度、ロッキングや持続する疼痛、水腫などの症状によっては手術療法が選択されます。手術を行う上でも、できるだけ半月板を温存する方向で術式が決定されます。 

 

術後の入院期間、リハビリテーションの進め方については、病院によって多少異なりますが、半月板切除術では最短翌日から4日後程度の入院期間であることが多く、松葉杖をついて受傷側の脚は免荷したままでの退院となります。また、縫合術の場合は、1週間前後の入院期間とし、同様に受傷側の脚を免荷して松葉杖を使っての退院となります。 

 

損傷の仕方や復帰を目指す競技、その個人個人によって差はありますが、半月板切除術では早くて2ヶ月程度、半月板縫合術では、4ヶ月から8ヶ月程度でのスポーツ復帰を目指すとされています。 

 

リハビリテーションの進め方としては、まず入院期間中に松葉杖での歩行練習、階段の昇り降りの練習を行います。これは、松葉杖を使って自宅で安全に生活できることを目指し、その他にもその方に必要な動きがあれば練習を実施します。また、自宅でも行えるトレーニングメニューを理解してもらい、一人でも継続して行えるように指導します。 

 

並行して、膝の曲げ伸ばしの可動範囲を拡大する練習を行います。この際は、大腿と下腿の位置関係を意識し、正しい運動方向を誘導しながら曲げ伸ばしの練習を行います。また、膝の動きを良くするためのパテラモビライゼーションは患者本人に積極的に行ってもらいます。これは、膝蓋骨を自分の手で動かし、膝の曲げ伸ばしの際の膝蓋骨の動きをスムーズにします。また、大腿四頭筋セッティングという膝の下に入れたタオルなどを床に押し付ける運動を指導します。これは、関節運動を少なくしながら大腿四頭筋の収縮を促せるため、術後早期に重宝されるトレーニング方法です。また、受傷機転やその方の筋肉の収縮様式によってはハムストリングスとの同時収縮も促しながらのトレーニング方法を指導します。 

 

術後1週間程度から、徐々に受傷した側の脚の荷重練習を行っていきます。まずは、全体重の1/2程度から、少しずつ荷重を促していきます。半月板損傷を受傷した患者は、痛みや手術前の脚をかばった動き方から、左右均等な荷重ができなかったり、股関節や骨盤、体幹のアライメント(位置関係)が崩れていたりしています。そのため、姿勢や荷重部位、バランスを整えながら、荷重練習を行っていきます。また、この時期は膝関節に与えられる負荷が限られているため、体幹や股関節周囲を中心とした患部外トレーニングが主となります。 

 

術後2週間から1ヶ月程度で、ハーフスクワットやカーフレイズなどの徐々に体重をかけての運動を増やしていきます。また、歩行時の体重のかかり方も確認し、正常は歩き方を指導します。さらに1ヶ月から2ヶ月から、低めの段差のステップ練習からはじめ、階段の昇り降りへと進めていきます。また、この2ヶ月程度の段階で、膝を最大まで深く曲げられるようになることを目指します。 

 

術後3ヶ月程度で、このタイミングでジョギングができるかどうかは、リハビリテーションの進行の1つの目安となります。術後4ヶ月からは、反復横跳びやジャンプ、ターン動作などから、少しずつその患者の求めるスポーツの動きへと近づけていきます。ここからは、実際のスポーツの競技特性を踏まえながら、強度を高めていき、だいたい6〜8ヶ月後での競技復帰を目指して進めていきます

個人で行えるリハビリテーション

最後に、個人が自宅で行うことのできるリハビリテーションをいくつかご紹介します。しかし、最適なプログラムはその方の損傷の仕方や程度、術後の経過によって異なります。痛みを伴う運動を無理して行うことはせず、主治医やリハビリテーションを担当するセラピストと相談しながら、自宅でのリハビリテーションを進めていきましょう。 

・パテラモビライゼーション

膝を伸ばした状態や曲げた状態で、手を使って膝蓋骨(膝の皿)を上下・左右に動かします。膝蓋骨の動きを良くすることで、膝の曲げ伸ばしがスムーズになります。 

・大腿四頭筋セッティング

膝を伸ばして床に座り、膝の下に丸めたタオルなどを入れます。つま先をしっかりと上に向けて、膝の裏でタオルを床に押し付けます。タオルを押し付けた状態を5秒間ほど保持します。

・ハーフスクワット

脚を肩幅に開き、つま先を軽く外側に向けます。腰を反らせすぎないように注意して、24秒ほどかけて膝を90°まで曲げていきます。そこからまた、24秒ほどかけて元の姿勢に戻ります。 

・スプリットスクワット

両脚を前後に開いた状態で、両膝を屈伸させるスクワットを行います。 

・カーフレイズ

真っすぐ立った姿勢から、踵をゆっくりと上げてつま先立ちの姿勢へと移ります。上げきったら、今度はゆっくりと踵を下ろしていきます。踵が地面に着く前に、また踵を上げていきます。バランスをとるために、壁際などで片手を軽く壁に添えて行います。 

自宅での運動は、ご自身で管理することが大切となります。症状の変化に注意しながら、専門家と相談しながら進めていきましょう。 

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半月板損傷の治療

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