ハムストリングの肉離れの治療

ハムストリングの肉離れの解剖学的所見

目次

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは、短距離走やランニングなど、走るスポーツで起こりやすいスポーツ障害です。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れではどのような状態が起こっているのでしょうか。解剖学的にみていきましょう。 

肉離れとは

「肉離れ」という症状は、耳にすることも多い症状ですが、具体的には筋肉がどのような状態になっていることをいうのでしょうか。肉離れは、筋肉が部分的に断裂を起こした状態です。筋肉は収縮(縮む)と弛緩(伸び)を繰り返して働きますが、筋肉が緊張を保ちながら弛緩している状態で収縮が起こると、筋肉に負荷がかかり、部分的な断裂を起こします。 

 

緊張を保ちながら弛緩している状態で収縮が起こるのは、二つの関節にまたがって付いてる「二関節筋」であり、鳥の羽状に筋繊維が走行している「羽状筋」に起こりやすい傾向があります。(図1 筋繊維の走行) 

 

太ももの裏(ハムストリング)は、膝関節の屈曲と、股関節の伸展の二つの作用を持ち、膝関節と股関節の二関節に付着します。また、上腕二頭筋に代表される紡錘状の筋肉ではなく羽状筋です。 

 

羽状筋の筋肉が遠位性収縮している際に収縮が加わると、筋付着部で腱に筋肉がついている部分近くに負荷が加わりやすく、小さな血管の損傷や腱と筋の境目の部分や腱膜の損や、腱の損傷、などが起こります。こうして加わった損傷が肉離れと呼ばれます。 

ハムストリングの解剖学と肉離れの関係

太ももの裏(ハムストリング)を構成している筋肉は、大腿二頭筋(長頭)、大腿二頭筋(短頭)、半腱様筋、半膜様筋です。 

 

ハムストリングの肉離れのうち、最も多く受傷する筋肉は大腿二頭筋の長頭です。続いて半膜様筋、半腱様筋、付着部となります。大腿二頭筋の短頭以外は、坐骨結節と脛骨または腓骨に付く二関節筋であり、最も受傷の多い大腿二頭筋(長頭)と、二番目に受傷の多くみられる半膜様筋は、半分が羽状筋です。 

 

太ももの裏(ハムストリング)は、二関節筋であるがゆえに股関節と膝関節の両方の動きを受けて伸張し、さらに、瞬発力を発揮する速筋の線維が多いので、強い力で収縮が起こります。遠心性収縮が起こっているときに、強い収縮が起こることで筋にかかる負荷も大きくなり、肉離れを受傷しやすいとされています。 

 

太ももの裏(ハムストリング)の起始・停止部の構造は複雑であり、股関節部では、坐骨結節、仙結節靭帯、大腿骨に付着し、仙骨部(腰部)の動きの影響も受けます。膝関節部では、腓骨、脛骨、斜膝窩靭帯、膝窩筋の筋膜に付着し、足部の動きの影響も受けます。三つの関節の動きの影響を受け、複雑な構造をしていることも肉離れ起こしやすい要因であるとされています。(図2 ハムストリングの解剖) 

ハムストリングの肉離れが好発する年齢、スポーツ、性差は?

肉離れのなかで、最も高い頻度でみられるのが、太ももの裏の筋肉であるハムストリングの肉離れです。太ももの裏(ハムストリング)の筋肉が部分的に断裂する障害でスポーツ時に多くみられます。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れが起こりやすいスポーツ、年齢、性別について説明していきます。 

ハムストリングの肉離れが起こりやすい動作

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れが起こりやすい動作は、走っているときに、足が地面に着地する直前、または、足が地面に着地したときです。 

 

太ももの裏(ハムストリング)は、股関節の伸展(足をお尻から後ろにあげる)と膝関節(膝関節を曲げる)二つの働きを持ち、股関節と膝関節の二つの関節に付着する二関節筋です。 

 

着地直前では、股関節が曲がった状態で膝関節が伸ばされ、着地する足にブレーキをかける状態となります。このとき太ももの裏(ハムストリング)は遠心性の収縮が起こっており、膝関節のハムストリングの付着部付近に最も負荷がかかります。よって、走っていて足が地面に着く前に肉離れが起こった場合は、太ももの裏(ハムストリング)の膝上部分が肉離れを起こすことが多くみられます。 

 

足が地面に着地したときは、膝関節が伸ばされた状態で股関節が曲がり、地面に着地した際の足裏から地面の反力がかかり、股関節のハムストリングの付着部付近に最も負荷がかかります。よって、足が地面に着いた時に肉離れを起こした場合は、太ももの裏(ハムストリング)の股関節のつけ根付近が肉離れを起こすことが多くみられます。 

 

他にも、膝関節を伸ばした状態で転倒した際に、股関節の屈曲が加わることでも肉離れは生じます。 

 

ハムストリングの肉離れが起こりやすいスポーツ

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは、ハムストリングが伸ばされた状態(遠心性収縮)で、股関節、または膝関節の屈曲が起こるときであり、股関節、膝関節の屈曲進展を繰り返す動きが多いスポーツで起こりやすいことが言えます。そのため、走る動作、ジャンプする動作、踏み込む動作、キック動作を繰り返すスポーツでみられます。短距離走で肉離れが生じることが多いですが、他にも、ランニング、サッカー、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、野球、テニスなどでも起こります。 

 

プレーヤー同士の接触、転倒などでも肉離れを受傷することがあり、その場合は柔道やレスリングなど、相手と激しくぶつかり合う格闘技でみられます。 

ハムストリングの肉離れが起こりやすい年齢

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れはスポーツを行っている人によくみられます。また、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れが起こりやすい条件としては、太ももの裏(ハムストリング)の柔軟性の低さ、筋肉の疲労の蓄積、準備運動不足、脱水傾向、体幹筋力の弱さ、左右の下肢の長さの違いや他の筋肉との協調性・連動性の低下、太ももの裏(ハムストリング)の筋力低下、太ももの裏(ハムストリング)の拮抗(きっこう)筋1)である大腿四頭筋の筋力がハムストリングの筋力に対して強すぎることなどがあげられます。 

 

肉離れは繰り返しやすく、過去に肉離れの既往がある人は、筋肉の損傷部分の組織が変化していることや筋肉の機能低下を起こしていることが見受けられ、再発することも多くみられます。 

 

太ももの裏(ハムストリング)をよく使うスポーツを行っており、身体の柔軟性が低下している人、体幹の不安定性がみられる人、太ももの裏(ハムストリング)の拮抗筋である大腿四頭筋とのアンバランス、股関節や膝関節周囲の筋肉と太ももの裏(ハムストリング)とのアンバランスなどがある人、過去に肉離れの経験がある人に、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは起こりやすいと言えます。 

 

スポーツを日常的に行っている人では、成長期にあり、骨格と筋肉の成長のアンバランスさが起こりやすい中学生や、大腿四頭筋の筋力が強い若い世代、加齢とともに筋肉の柔軟性が乏しくなってくる中高年など、幅広い年齢層に起こります。 

 

普段スポーツをやっていない人では、「子どもの運動会の保護者リレーで、張り切って思いっきり走った30~50代のお父さんが肉離れ」という事例も多くみられます。 

 

1)拮抗(きっこう)筋: 

収縮して中心となって力を発揮する筋肉(主動筋)と反対の動きを行う筋肉であり、筋肉が伸びた状態で働き、運動のスピードや強さの調節を行う筋肉。 

ハムストリングの肉離れが起こりやすい性別

ハムストリングの肉離れは性差でいうと男性に起こりやすい傾向があると言えるでしょう。男性の方が女性に比べて筋力が強く、運動時にかかる太ももの裏(ハムストリング)への負荷が強いことが原因にあると考えられます。女性に起こらないというわけではありませんので、運動前には肉離れを起こさない身体づくり、準備運動が大切です。 

ハムストリングの肉離れの症状(肉離れの軽度~重度別に)

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れになるとみられる症状について、自覚症状、画像でみた症状を詳しく説明していきます。 

肉離れの重症度

肉離れはMRI画像所見によって、3つのタイプに分けられます。MRI画像で肉離れをみたときに、微細な血管が傷ついて出血が認められるもの(Ⅰ型)と、筋付着部付近の腱と筋の移行部、腱膜に損傷が起こったもの(Ⅱ型)、腱の断裂や付着部がちぎれてしまうもの(Ⅲ型)の3つのタイプが存在します。症状の大きさは、Ⅰ型が軽症、Ⅱ型が中等度、Ⅲ型が重症となります。 

 

Ⅱ型では、腱膜が途中で切れていることが確認できます。Ⅲ型では、腱付着部で完全断裂していること、大きな出血が確認できます。 

肉離れの自覚症状

肉離れが起こった時は、強い痛みを感じます。バチン、ブチッという音や衝撃を感じることもあります。重症になるほど、痛みも強くなり、歩行も困難となります。出血による腫れもみられ、重症になるほど出血もひどくなるので、腫れも大きくなります。内出血や血の塊ができることもあります。 

 

肉離れの症状の大きさは、受傷時の姿勢や動作、負荷の大きさによって変わります。 

重症度別の症状

■Ⅰ型:軽症 

微細な血管の出血が生じた状態で、筋や腱自体には損傷はほとんどみられません。受傷後すぐに、うつ伏せで膝を伸ばしても痛みは生じず、受傷部を押さえることや、走る、ジャンプするなど運動をするときに痛みが生じます。 

■Ⅱ型:中等度 

筋と腱の移行部、腱膜の損傷がみられます。受傷後にうつ伏せで膝を伸ばすと明らかな強い痛みがみられます。受傷部を観察すると、軽くへこみが見られることもあります。運動時にも痛みを生じます。 

■Ⅲ度:重症 

 腱の付着部が完全に断裂することがみられます。受傷部のへこみがみられ、痛みも強く、歩くことも障害されます。Ⅲ度の重症では手術が必要になることもあります。 

ハムストリングの肉離れの検査

運動時に太ももの裏に強い違和感や衝撃、痛みを感じ、痛みのある部分を押すと痛みが強くなる、痛みがある部分が凹んでいることで、太ももの裏(ハムストリングの肉離れを疑うことができます。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れが疑われた場合には、状態を確認するための画像検査や、受傷度を確認するためのストレッチを行う検査方法があります。ハムストリングの肉離れの検査について詳しく説明していきます。 

触診

太ももの裏の痛みのある部分を観察して、へこみやくぼみがみられれば、筋、腱組織の断裂が疑われます。痛みを感じる部分を指で押して痛みを感じる場合も肉離れが疑われます。 

画像検査

MRIでの画像診断を行い、肉離れの状態をみて、出血のみのⅠ型、筋肉と腱の移行部の損傷が認められるⅡ型、腱の付着部の断裂が認められるⅢ型のどの型であるかの確認を行うことができます。出血や損傷のある部位はMRIでは白く写ります。 

ストレッチでの検査

受傷してすぐに、うつ伏せになり、膝を曲げた状態から膝を伸ばします。痛みで膝を十分に伸ばすことができない場合は、Ⅱ型(中等度)以上の肉離れが疑われます。図3 ハムストリングの肉離れの重症度1 

うつ伏せで膝を伸ばすことができたら、仰向けに寝て、膝を伸ばした状態で足をあげていきます。足をあげることのできる角度(膝伸展位での股関節の屈曲角度:SLR)で重症度がわかります。肉離れを起こしていない方の足と、どのくらいの差があるかをみます。受傷していない足との差が小さいほど軽症、大きいほど重症となります。

角度による重症度の目安では、70度以上股関節の屈曲が可能な場合は軽症、30~70度の場合は中等度、30度以下の場合は重症と考えられます。(図4 ハムストリングの肉離れの重症度2)

ハムストリングの肉離れになると競技復帰の期間はどれくらい?

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れはスポーツ中に起こりやすい障害です。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れになると、痛みや腫れがみられ、歩行や運動に障害きたします。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れでは、競技に復帰するまでの期間は、肉離れの重症度によって異なります。競技に復帰するまでに、どのくらいの期間が必要であるのかを詳しくみていきましょう。 

競技復帰の条件

肉離れは、傷つく組織や損傷の程度はそれぞれ異なりますが、筋肉、腱の組織の損傷がみられ、痛み、腫れの症状がみられます。痛みに関しては、自発痛はもちろん、受傷部を押しても痛みがないこと、ストレッチを行っても痛みがないこと、運動時に痛みがないことが条件となります。 

 

肉離れになると、筋や腱組織が損傷して、筋力や筋肉の柔軟性、周囲の筋肉との協調性などが低下します。組織の回復が不十分なまま競技を再開すると、損傷した部分と同じ箇所の肉離れを起こすことや、受傷した周囲の組織に負荷がかかって肉離れを再発することがみられます。 

 

受傷した組織が十分に回復し、機能が低下した筋力や柔軟性、バランス能力、瞬発性、持久力などが改善すること、競技復帰に必要な運動のパフォーマンスが、ある一定のレベルをクリアすることも条件となります。 

 

受傷してから腫れや痛みが引くまでの安静期間を経て、リハビリを開始し、競技復帰の条件をクリアすることが競技復帰を可能とするためには必要です。 

Ⅰ型(軽症)の場合

損傷が微細な血管にとどまり、筋や腱組織までの損傷がみられない場合には、復帰までには1~2週間のリハビリ期間を要します状態によっては数日で競技復帰できる場合もあります

Ⅱ型(中等度)の場合

腱膜などの組織の部分的な断裂が認められる場合には、受傷後、1~3カ月間のリハビリ期間を要します。約3週間ごとにMRIで経過を確認し、平均して約6週間での競技復帰が可能です。 

Ⅲ型(重症)の場合

腱自体、腱付着部分の完全断裂を起こしている場合は、状態によっては手術が必要となることがあります。手術後は、積極的なリハビリが開始できるまでに1か月前後かかります。そこから競技復帰までには半年間~1年間程度を要します。保存療法の場合も競技復帰までには数か月間要します。競技復帰後も、太もも裏部分のひきつれ感や違和感が残存することがあります。 

ハムストリングの肉離れの整形外科での治療

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れでⅠ度、Ⅱ度の軽症~中等度の場合は保存療法が行なわれます。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れと診断がつくと、受傷後すぐにRICEを行い、症状の経過をみながら物理療法やリハビリテーションを開始します。Ⅲ度の重症例では、手術治療を行うこともあります。 

肉離れを起こしてすぐの治療

受傷後すぐ(48時間)は、組織の損傷による出血、腫れを抑えるために、急性期の治療の基本であるRICE2)処置を行います。安静にして、氷嚢等で受傷部位を冷やし、バンテージなどで圧迫します。 

 

下肢のRICE処置時には、挙上を行う場合、仰向けになり、足部を上げる肢位をとるのが一般的ですが、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れ時は、仰向けで足を上にあげることで痛みを誘発するので、うつ伏せになって、膝を曲げる、または、仰向けになって膝を立てる肢位をとるようにします。 

 

歩行は必要に応じて、松葉杖などを用いて、受傷した足に荷重しないようにします。 

 

2)RICE: 

急性期の炎症を抑えるための処置。RはRest(安静)、IはIce(冷却)、CはCompression(圧迫)、EはElevation(挙上)を指す。 

急性期を過ぎてからの治療

受傷後3~5日間ほどたち、受傷部分の腫れや痛みが落ち着いてきて、歩行など、日常生活動作が行なえるようになってきたら、物理療法や関節可動域訓練を開始します。歩行は両松葉杖から片松葉杖、杖なしと段階的に進めていきます。 

受傷一週間後の治療

物理療法、RICE処置、関節可動域訓練を進めていきながら、ストレッチや筋力トレーニングを開始します。痛みが出ないように、軽めのプログラムから開始し、徐々に自発的な筋肉の収縮をともなうプログラムへと、筋肉への負荷をかけていきます。 

受傷2週間後の治療

ストレッチを行っても痛みを生じず、関節の動きをともなったものや負荷をかけた筋力トレーニング、積極的な関節可動域訓練が可能となってきたら、動作訓練やバランス訓練、負荷をかけた筋力トレーニングを開始し、徐々に歩行からジョギングへと勧めていきます。 

競技復帰に向けての治療

ある程度、競技の基礎となる動作の獲得が行なえたら、競技復帰に向けてダッシュや実際の動作など、競技復帰に向けてのプログラムを行います。再発予防のためのストレッチングなども行います。 

ハムストの肉離れの手術療法

腱付着部が完全断裂してしまうようなⅢ度の重症例の場合は、手術を行うことがあります。手術では、断裂した腱の断端を本来付着するべき場所へと縫い留めます。大腿二頭筋長頭、半腱様筋の付着部が断裂した場合は、糸のついたビスを用いて坐骨結節へと固定させる術式が多く行われます。断裂した腱の断端は、時間が経過すると縮んで硬くなっていることも多く、人工靭帯や自分の身体の他の部位から採取した腱を、断裂した腱の断端に足して固定することもあります。 

 

術後は2~3週間の安静が必要であり、徐々に、関節可動域訓練からリハビリを開始し、一カ月前後かけて関節可動域の再獲得を行います。状態を診ながら負荷の少ないストレッチングや等尺性の筋力トレーニングを行い、競技動作の獲得に向けてプログラムを実施していきます。痛みがなくなり、競技復帰レベルまで筋肉の状態、身体運動レベルが回復すれば競技復帰となり、数カ月~1年間要することもあります。 

ハムストリングの肉離れのリハビリ

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れの治療では、急性期の腫れや痛みが落ち着いた後にリハビリを行っていきます。手術を行った後にも、リハビリは必要です。ハムストリングの肉離れのリハビリについてみていきましょう。 

物理療法

受傷した組織の痛みや腫れ、熱感など炎症がみられる間は、RICE処置にて安静にして冷やしますが、炎症が治まると組織が瘢痕化をおこし、硬くなって肥厚します。組織の機能低下や、動きの悪化につながるため、温熱療法で温めることや、電気や超音波治療にて血行を促し、組織の回復を促すことを行います。関節可動域訓練やストレッチなど。患部を動かした後は炎症を鎮める目的で冷却を行います。 

関節可動域訓練

安静を保ち、関節を動かさないままでいると筋肉が硬く縮んで柔軟性が奪われ、関節の可動域も狭くなります。受傷後の炎症が治まったら、痛みが出ない範囲で、施術者が他動的に下肢を動かして関節の可動域の維持・改善を図ります。動かした後は受傷部分に熱を持つので、冷却を行います。 

 

関節可動域が徐々に改善し、スムーズに動かせるようになってきたら、痛みの出ない範囲で、自動運動を行って関節の可動域を徐々に拡大していきます。エルゴメーター(自転車のペダルを漕ぐマシン)などを利用して股関節、膝関節の可動域拡大を図っていきます。 

ストレッチング

自動運動での関節可動域訓練を行えるようになれば、筋肉の柔軟性を引き出すため、筋肉の長さを確保するためにストレッチングも行います。初めは、筋肉が少し伸ばされていると感じるところで静止して筋肉を伸ばすストレッチングを行います。負荷をかけての運動が行なえるようになれば、動きの中でのストレッチングも行っていきます。 

筋力トレーニング

筋力トレーニングは静的なストレッチングを痛みなく行えるようになったら行います。初めは、関節の動きをともなわない等尺性運動での筋力トレーニングを行います。徐々に関節の動きをともなう筋力トレーニングも行っていきます。何もつけずに自分の足の重さを負荷とする筋力トレーニングから開始し、セラバンドなどを用いて少しずつ負荷をかけていくようにします。軽く走るなどの運動時でも痛みが出なくなれば、抵抗を加えた筋力トレーニングを行います。 

歩行訓練

日常生活動作自立に向けて、徐々に痛みの出ない範囲での歩行訓練を開始します。肉離れの状態によって、両松葉杖で足への荷重を免荷した歩行を行うこともあります。両松葉杖から片松葉杖、杖なしというように段階付けて進めていきます。 

 

歩行を獲得できれば、リハビリの進み具合により、ジョギング、ランニング、ダッシュと運動負荷を大きくしていきます。 

動作練習、予防トレーニング

筋肉の柔軟性、筋力、バランス力、協調性が獲得できれば、実践的な動作練習を行います。競技復帰レベルまでのトレーニングを行うほか、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは再発を起こしやすい障害でもあるので、再発防止に向けての予防トレーニングも行います。 

 

多くは走っている最中の受傷であることから、ランニングフォームの確認、修正も行います。 

 

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れの予防には、遠位性収縮の強化が有効であるとされています。ただし、受傷した組織の回復が不十分なまま行うと、組織が傷つくリスクがあるため、十分に機能、運動レベルが回復してから行う必要があります。 

 

太ももの裏(ハムストリング)の遠心性収縮の強化は膝立ちから床へと身体を倒していく方法、立位で両手を床の方に伸ばしていく方法があります。(図5 ハムストリングの遠心性収縮の強化) 

ハムストリングの肉離れに効果的なストレッチ

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れを起こした場合のストレッチは、医師の診断、指示の下に行う必要があります。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは、太ももの裏(ハムストリング)の柔軟性低下も要因のひとつとなります。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れを起こさないためには、太ももの裏(ハムストリング)だけではなく、股関節周囲の筋肉の柔軟性を保つ必要があります。太ももの裏(ハムストリング)のストレッチと、股関節のストレッチをいくつか説明していきます。 

ハムストリングのストレッチ

太ももの裏(ハムストリング)のストレッチは、仰向けになり、膝の裏を抱えて足をあげ、膝をゆっくりと伸ばしていきます。(図6 ハムストリングのストレッチ)

大腿四頭筋のストレッチ

太ももの裏(ハムストリング)と主動筋と拮抗筋の関係にある大腿四頭筋は、仰向けになり、片方の足を正座するように膝を曲げ、太ももの前面を伸ばします。(7 股関節周囲筋のストレッチ1) 

股関節内転筋のストレッチ

両足を開いて座り、両肘を床につけるように、体幹を前へ動かしますが、骨盤が後ろへ倒れてしまわないように壁などにお尻をつけて行うとよいでしょう。(図7 股関節周囲筋のストレッチ1) 

股関節外旋筋のストレッチ

仰向けに寝て片膝を立て、もう一方の足で内側へ倒すように動かします。(図8 股関節周囲筋のストレッチ2 

股関節内旋筋のストレッチ

仰向けに寝て、片膝を立て、もう一方の足を、あぐらをかくように片膝を立てた足にのせます。(図8 股関節周囲筋のストレッチ2) 

ハムストリングの肉離れに効果的なテーピング

太ももの裏(ハムストリング)の肉離れは再発しやすく、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れ受傷後、競技復帰の際の再発予防に有効な手段です。太ももの裏(ハムストリング)の肉離れの予防に有効なテーピング方法についてみていきましょう。 

肉離れがテーピングで治る?

肉離れはテーピングでは治りませんが、肉離れによって傷ついた組織に負荷がかかると、再び損傷することも多く、再発を繰り返しやすい傾向があります。再発を予防するためには受傷した組織が十分に回復することと、股関節、膝関節の柔軟性を高めること、筋力強化、周囲の筋とのバランスを保つこと、姿勢のとり方、動作時の身体の使い方などを整えることが大切ですが、受傷後に競技復帰する際に不安が残る時は、テーピングで筋肉のサポートを行うことも有効です。 

 

テーピングは圧迫して固定することで保護の役割や、筋肉の走行に沿って貼ることで筋肉が働くサポートとなります。 

 

テーピングは、太ももの裏(ハムストリング)の肉離れの後に、競技復帰する際の安心材料として補助的に用いることがよいでしょう。テーピングにだけ頼るのではなく、肉離れを起こしにくいように身体の柔軟性を保ち、筋肉バランスを整えて、十分に準備することも大切です。また、競技後は、ストレッチやリラクゼーションなどで筋肉を十分に休めるケアも必要です。 

ハムストリングの肉離れのテーピング

膝の上から股関節のつけ根にかけて、圧迫しながらテーピングをグルグルと巻いていくことで太ももの筋肉を圧迫固定して、保護の役割を行います。グルグルと圧迫を加えながら巻いていくだけなので、椅子に座った状態で、一人でもテーピングを巻くことができます。 

 

また、太ももの裏(ハムストリング)の走行に沿って、太ももの裏の内側、外側に縦にテープを貼り、二本の貼ったテーピングの隙間を埋めるように、斜めにバッテンをつくって貼っていきます。固定としてさらに水平にはります。(図9 ハムストリングの肉離れのテーピング)

太ももの裏の部分であるので、一人で貼ることは難しく、誰かに貼ってもらわなければ難しいでしょう。 

 

肉離れを起こして、まだ組織が十分に回復していないのに自己判断でテーピングを行い、競技復帰することは避けましょう。再損傷する恐れがあり、治りにくくなります。MRIなどの画像診断で組織の損傷の回復を確認し、主治医の指示が出てから競技復帰し、テーピングを有効に用いましょう。